高齢化が進む日本は予防医学が必要不可欠
予防医学を理解する
予防医学とは、その名称からもわかるように予防のための医学です。治療するという観点ではなく、あくまで予防であるということを理解した上で知識を取り入れていきましょう。
予防医学の考え方を、人間以外のものに例えてみると理解しやすくなります。車や機械類は、メンテナンスをしっかりやるかやらないかで寿命が変わります。全くメンテナンスされていない車は、使えば使うほど事故や故障のリスクが高まります。しかし、こまめに点検し、必要に応じて部品を交換したり調整したりすることで長く維持できるようになります。完全に壊れてしまってから直すよりも、壊れる前に対処するほうが被害を最小限におさえられるのです。
人間の健康もこれと同じで、病気にかかるまで放置するのではなく、病気を未然に防ぐために行動することで健康寿命が延びます。
予防医学が必要な理由
医療現場で予防医学の重要性に対する認識が高まっている背景には、日本の医療現場が抱える悩ましい現状が大きく関係しています。日本の医療は治療医学をメインとし、医療技術は世界的にも高い水準を誇ります。難治性の病気でも、治療によって回復するケースが増えています。かつては打つ手なしだったガン治療も、その多くが医療の進歩によって対処可能な病気になってきました。
病気の治療に関しては大きく進展しているものの、患者の数は増えていく一方です。ガン治療がうまくいっていても、そもそもの患者数を減らすことにはつながっていないのです。介護の原因となる病気の中で最も多い脳卒中も、予防にもっと力を入れていれば防げたかもしれない人が大勢います。このようなことから、治療ではなく予防という観点からの医学に注目が集まるようになりました。
高齢化と社会保障制度の限界
医学は進歩しているのにもかかわらず患者が増えているのは、日本の高齢化が進んでいることを意味しています。2025年には日本人の4分の1が高齢者になるといわれており、健康寿命の重要性が今後ますます高まっていくことは確実です。日本は長寿国ですが健康長寿国かというとそうではなく、寝たきりの高齢者が世界的に見ても多いという現実を抱えています。寝たきりの高齢者はアメリカの約5倍いるともいわれており、その数はさらに増えていく見込みです。
ここで問題になるのが社会保障費です。このまま治療を必要とする高齢者が増え続けてしまえば、社会保障制度は完全に崩壊してしまいます。少子化によって社会保障費の確保が難しくなる以上、できるだけ早いうちから予防医学に力を入れていくしか今は方法がありません。高齢になってからではなく、若いうちから予防医学への意識を高めていくことが、これからの社会秩序を保つためには不可欠なのです。