健康寿命と平均寿命の違い
健康寿命の定義
予防医学に関連する言葉としてよく使われるのが「健康寿命」です。寿命については平均寿命というものもありますが、健康寿命とは別の考え方を持つものです。では、健康寿命と平均寿命の違いにはどのようなものがあるのでしょうか。
その前に健康寿命の定義について確かめておきましょう。健康寿命とは、健康上の問題に阻害されることなく日常生活を送ることができる期間のことです。治療や介護の必要がなく、自分のことは自分で行って生活ができる期間が健康寿命であり、命の期限ではありません。日本の高齢者は長寿の方が多く、平均寿命は伸び続けている状況です。そんななか、健康寿命を長くすることに対する意識が高まってきているのです。
平均寿命と健康寿命
平均寿命は、人が死亡する年齢の平均値です。このなかには、健康な人から治療、介護が必要な人まですべての人が含まれています。日本では、平均寿命も健康寿命も女性のほうが男性を上回っています。2016年に厚生労働省が公表したデータによれば、平均寿命は女性87.13歳、男性が80.98歳でした。一方の健康寿命は、女性74.79歳、男性72.14歳でした。これらのデータから、平均寿命と健康寿命では大きな差があることがはっきりと分かります。長く生きることは誰にとっても大切なことですが、生きている間に健康寿命をいかに長くしていくかがさらに重要となってきます。
健康寿命が短いことで起こる問題
健康寿命が短くなってしまうのは、生活習慣のあり方が大きく関係していることは周知の事実です。食事や睡眠、運動のバランス、飲酒や喫煙の習慣、ストレスなど、健康を脅かす要素は誰のそばにもあるものです。生活習慣が乱れてしまうと、糖尿病や高血圧などの生活習慣病を発症しやすくなります。飲酒や喫煙がもたらす健康への害もあります。
高齢になってくると、身体機能がどうしても衰えてしまいます。同じ年齢の高齢者でも、自立した生活が問題なく送れる人と介護が必要な人がいます。健康寿命が短いと、生活の質が著しく低下してしまいます。普通の生活が満足に送れなくなるだけでなく、介助や介護をする家族にも大きな負担がかかってしまいます。身体的な負担だけでなく、経済的負担も重くのしかかり、本人も家族も心身共に疲弊した生活を余儀なくされてしまうのです。
平均寿命と健康寿命の差が開けば開くほど、社会保障負担が重くなってしまいます。社会保障を支える世代は年々減少しており、やがては高齢者1人を1.3人の現役世代で支えていく時代がやってきます。少子高齢化からもはや逃れることができない日本において、高齢者の健康寿命を延ばすことは急務なのです。